Cats and Dogs

現像ノートSeason 3STIL.BIZ第 2 話 / 全 6 話

現像ノート

カメラは、作らなかった ── VisionKit に任せた話

名刺アプリの心臓は、撮るところです。だから私は、いちばん難しいのは「きれいに取り込む」ことだと思っていました。傾きを直し、影を消し、明るさを揃える ── そのための専用カメラを作る覚悟もしていました。でも、作りませんでした。iPhone が、もうそれを持っていたからです。

カメラは、作らなかった ── VisionKit に任せた話

名刺アプリの心臓は、撮るところです。そこできれいに取り込めなければ、あとの読み取りも振り分けも、土台から崩れます。だから私は、このアプリでいちばん難しいのは「撮る」ところだと思っていました。今日は、その心臓を、自分では作らなかった話です。

いちばん難しいと思っていたこと

名刺をまっすぐ、読める状態で取り込むには、いくつもの処理が要ります。紙の四角を見つけて、斜めに撮れた傾きを直し、机に落ちた影を消し、明るさを揃える。特に影を消すところが、このアプリでいちばんの難関になるだろう、と最初は見ていました。専用のカメラ画面を書いて、補正処理を自前で組む ── そのつもりで準備をしていました。

iPhone が、もう持っていた

ところが、調べてみると、iPhone には書類を撮るための仕組みが、最初から標準で入っていました。VisionKit のドキュメントスキャナ(VNDocumentCameraViewController)です。メモアプリで書類をスキャンするときの、あの画面です。

これに名刺をかざすと、紙の四角を自動で見つけ、傾きと歪みをまっすぐに直し、照明を整えて取り込んでくれます。実機で試して、拍子抜けしました。いちばん難しいと思っていた影や明るさの処理が、十分すぎるくらいきれいだったのです。撮ったものを見て、私が出した感想は「若干、明るすぎるくらい」── つまり、足りないどころか、十分でした。

作らない、という判断

だから、専用カメラの開発は、やめました。OS が業界水準の補正をすでに持っているのに、それを自前で下手に作り直す理由はありません。接写でピントが甘くなるときも、凝った対策を足すより「撮り直してもらう」で済みました。

アプリが本当にやるべきなのは、撮ったあとの「読む・振り分ける・連絡先にする」のほうです。撮るところは、iPhone に任せる。自分の時間と容量を、価値の出るところに寄せる。個人で全部を作っていると、この「作らない」という判断が、ときどきいちばん効きます。

OS の、見えない力

iPhone には、こういう「見えない力」が、たくさん仕込まれています。自分で一から作るより、すでにそこにある力を見つけて、信じて、任せる。STIL.BIZ のカメラは、私が書いたものではありません。けれど、これがいちばんいい選択でした。

道具を作るというのは、何でも自分で作ることではなくて、何を作らないかを決めることでもある ── そう教わった気がします。

次回

撮るところは任せられました。問題は、その先 ── 撮った名刺を「読んで、項目に振り分ける」ところです。ここには、新しい端末でしか動かない AI が絡みます。次は、その AI の当落線の、向こう側の話をします。

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