
ここまで、表の崩れや、税の取り違えを、一つずつ直してきました。当然、その過程では、実際のレシートで、何度もつまずいています。今日は、その一枚一枚を、どう扱ったかの話です。
名刺で、反省したこと
ひとつ前の名刺アプリ STIL.BIZ で、私は反省したことがありました。問題に、本番で初めて気づくことが多かったのです。手元では動くのに、実際の名刺で、初めて崩れる。直しても、また別のところで崩れる。
だから RECEIPT では、最初から決めていました。実機で問題が出たレシートは、直して終わりにせず、そのままテストにする。レシートは、店ごとに、無限に型があります。一枚直すたびに、別の一枚を壊しているかもしれない。それを、人の注意力だけで見張るのは、無理だと思いました。
バグを、一枚ずつ標本にする
たとえば、値引きの行が、消えてしまう。あるスーパーのレシートで、「割引 −¥777」が、まるごと欠けていました。マイナスの符号を取りこぼし、しかも「割引」という言葉が、なぜか読み飛ばす言葉のリストに紛れ込んでいた。
あるいは、iD で払ったのに、「現金」で記録される。別のレシートでは、支払い方法を見分けるところに、iD という選択肢が抜けていました。
こういう一つひとつのつまずきを、直すだけで終わらせませんでした。そのレシートの全文を、文字の位置ごと、テストとして固定する。次からは、同じレシートを読ませて、もし同じ場所で同じように間違えたら、すぐに気づけるように。困らせてくれた一枚を、標本にして、瓶に詰めておくようなものです。
実レシートが、見張りになる
こうして、つまずいたレシートが一枚増えるたびに、見張りが一人、増えていきました。あのレストラン、あのスーパー、あの百円ショップ ── 実際に私を困らせてくれたレシートたちが、そのまま、二度と同じ失敗をさせないための番人になる。
新しい直しを入れたとき、過去のどれか一枚が「それ、こっちが壊れるよ」と待ったをかけてくれる。一人で作っていると、自分の見落としを指摘してくれる相手は、なかなかいません。だから、過去の自分のつまずきに、その役をやってもらうことにしました。
直すこと自体が、資産になる
個人で作っていると、つい「動いたからいい」で、先に進みたくなります。でも、直したそばからテストに変えておくと、直すという行為そのものが、消えずに残る資産になります。
バグは、敵というより、これから先を守ってくれる標本でした。一枚のレシートでつまずくのは、悔しい。けれど、そのつまずきを瓶に詰めておけば、未来の自分が、同じところで転ばずに済む。レシートを読むアプリは、たぶん、こうやって少しずつ、丈夫になっていくのだと思います。
次回
次は、ここまでとは少し毛色の違う話をします。インボイスや電子帳簿保存法をめぐって、「完全対応」と、あえて書かないと決めた ── 言葉づかいの話です。
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