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現像ノートSeason 4STIL.RECEIPT第 5 話 / 全 6 話

現像ノート

「対応」とは、書かないと決めた ── 税の、言葉づかい

「インボイス完全対応」「電帳法に完全対応」── 一言で書けたら、たぶん強い。分かりやすいし、目を引く。でも、私は書きませんでした。税は法律で、私はアプリを作る人間であって、税理士ではないからです。便利な一言を、こらえる。そういう、言葉づかいの話です。

「対応」とは、書かないと決めた ── 税の、言葉づかい

ここまで、レシートを読む技術の話をしてきました。最後の二つは、少し毛色が違います。今日は、コピー ── 言葉の話です。アプリそのものではなく、アプリを「どう言うか」で、ひとつ決めたことがあります。

「完全対応」と、書きたくなる

レシートのアプリには、インボイス(適格請求書)や、電子帳簿保存法 ── いわゆる電帳法が、どうしても絡みます。登録番号を読み取る。検索の要件に合わせて保存する。だから、宣伝の言葉としては、「インボイス完全対応」「電帳法に完全対応」と、一言で書けたら、たぶん強い。短いし、分かりやすいし、目を引く。検索でも引っかかりやすい。

書きたくなる気持ちは、よく分かります。実際、世の中には、そう書いているアプリもあります。

でも、私は税理士ではない

それでも、書きませんでした。

税は、法律です。そして私は、アプリを作る人間であって、税理士でも、税務署でもありません。「完全対応」と言い切った瞬間、その言葉は、法的な保証のように響きます。「これを使えば、税の手続きは大丈夫」と、受け取られかねない。

もし、その一言を信じた誰かの確定申告が、どこかで通らなかったら。あるいは、制度のほうが変わって、「完全」が「完全」でなくなったら。一言の便利さが、誰かの実害になりかねない。それは、私が背負える約束ではありませんでした。

だから、やっていることを、そのまま書く

代わりに、アプリが実際にやっていることを、行為のまま書くことにしました。

「対応した」ではなく、「インボイス登録番号の、自動読取と形式チェック」。何ができるか、を書く。「電帳法に対応」ではなく、「取引年月日・金額・取引先で検索できる保存(電子帳簿保存法の検索要件に沿った項目)」。どの要件に沿っているか、を書く。できることと、まだできないことの境目を、便利な一言で、ぼかさない。

少し長くなります。歯切れも悪くなります。でも、読んだ人が、誤解したまま大事な手続きに進んでしまう、という事故は、起きにくくなる。

誇張しないことが、ブランドだった

これは、STIL ファミリーでずっと守ってきた「誇張しない」の、いちばん厳しい場面でした。

「最強」や「劇的」を書かないのは、まだ簡単です。誰が見ても、盛りすぎだと分かるから。でも、「完全対応」と書けば一行で済むところを、あえて二行かけて、正確に、濁さずに書く ── そこにこそ、いちばん性格が出る気がします。便利な一言を、ぐっとこらえる。読む人を、見くびらない。

売り込みの言葉ほど、自分への嘘になりやすい。事実だけを書くと決めると、書けることは少し減ります。けれど、嘘は、ゼロにできる。税という、間違いが許されない領域では、その不器用さのほうを、選びたいと思いました。

次回

次は、いよいよ最終話です。撮った一枚のレシートが、経費になるまで ── その流れを最初から最後までたどりながら、四つ目の道具を作って思ったことを書いて、現像ノート Season 4 を閉じます。

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