
「現像ノート」は今日、六つ目のシーズンに入ります。これまでの五つ ── 動画の一瞬、顔のイラスト、名刺、レシート、声 ── は、どれも「あなたの素材を、この iPhone の中で形にする」道具でした。今度の道具は、少し毛色がちがいます。素材を処理しません。Mac の操作を、手元に。 iPhone を、Mac の手元の操作卓にするアプリ、STIL.HUB です。
ボタンが並んだ、小さな機械
配信者の机の写真などで見かける、ボタンがずらりと並んだ小さな機械があります。ボタンひとつで配信画面が切り替わったり、アプリが立ち上がったりする。よく使う操作が、物理的なボタンとして目の前に並んでいる ── あれが、ずっと少しうらやましかった。
でも、そのために専用の機械をひとつ増やすのか、と考えたとき、ふと気づきました。私の机の上には、もう iPhone が置いてある。画面があって、触れて、いつも手の届くところにある。足りないのは機械ではなくて、iPhone にその仕事を渡す道だけでした。
相棒を、Mac に住まわせる
ただし、ここには iOS の壁があります。iPhone のアプリは、単体では Mac を操作できません。外から Mac を動かすには、Mac の側に、命令を受け取って実行してくれる誰かが要る。
だから STIL.HUB は、二人組です。iPhone 側のアプリと、Mac のメニューバーに小さく常駐する相棒(Companion)。iPhone のボタンを押すと、相棒がそれを受け取って、アプリを立ち上げ、キーを打ち、ファイルを開く。
この相棒は、Mac App Store には置けません。他のアプリを起動したり、キー操作を送り込んだりという仕事が、ストアの安全柵(サンドボックス)の外にあるからです。なので、公証というAppleの検査を通したうえで、stil.photo/hub から直接配っています。この配り方の話は、最終回で少しだけ。
つながっていないときは、玄関になる
もうひとつ、最初から決めていたことがあります。Mac のそばにいないとき、このアプリを空っぽにしない。
Mac と離れているとき、STIL.HUB は、STIL ファミリーのアプリを並べたランチャーとして、そして横に置けば置き時計として働きます。名前の HUB は、ここから来ています。家族が六人になって、はじめて「家族の玄関」にあたる場所ができました。
十二日
着想をメモしたのが 7 月 18 日。App Store で公開されたのが 7 月 29 日。十二日でした。これまでの家族でいちばん速かったのですが、その十二日のあいだに、ちゃんとひと揃いの事件が起きています。この Season 6 では、それを順番に取り出していきます。
- Mac を「操作できてしまう」道具の、信頼の設計の話
- 「ok」と返事が来るのに、PDF が開かなかった話
- Mac に頼むのをやめて、iPhone に話しかけることにした話
- 「iPhone を、」という言葉が使えなくて、言葉を探して回った話
- iPhone が、手元の操作卓になるまで
はじめます
Mac の操作を、手元に。机の上の iPhone に、二つ目の仕事を渡す話です。次回は、その手前にある、いちばん大事な設計から。この道具は、Mac を操作できてしまう ── だからこそ必要だった、六桁の合言葉の話です。
STIL.HUB は App Store で公開しています。無料です。アプリと Mac 用の相棒は stil.photo/hub、本体は App Store に置いてあります。