
STIL. では、動画から取り出した一枚に、フィルムを思わせる色を重ねられます。書き出すときに、好きなルックを選ぶ。今日は、その色の話です。
白状すると、STIL. に入っているフィルムの色は、市場調査で決めたものではありません。私が実際に好きで、ずっと追いかけてきた色を、そのまま入れています。機能表に並ぶ項目というより、偏愛の結晶です。
なぜ「フィルムの色」なのか
私はカメラが好きで、ミラーレスもチェキも触ってきました。デジタルはきれいに撮れます。でも、どれだけ高画質でも、ときどき物足りなくなる瞬間がある。正確さと、心が動くことは、別の話だからだと思います。
フィルムには、その「正確ではないけれど、心が動く」色があります。少し転んだ肌、沈んだ影、滲んだ光。記録としては不正確かもしれないけれど、見返したときに、その日の空気まで戻ってくる。私はずっと、その感じが好きでした。だから STIL. でも、撮った一枚を「正しく」仕上げるより、「あの頃の色」に寄せられることを大事にしました。
8 つのルック

STIL. には、無料と Pro を合わせて 8 つのフィルムルックが入っています。
- 無料:Kodak、Fujifilm、Lomo、Warm ── まずは定番の温度から
- Pro:Portra 400、Fuji 400H、Cinestill、VHS 90s
並べてみると、自分の趣味がそのまま出ていて少し照れます。Portra 400 のやわらかい肌の階調、Fuji 400H の緑と空、Cinestill の夜のにじむ赤、そして VHS 90s ── これは画質のためではなく、ひたすら思い出のための一本です。子どもの頃に見ていた、あのテープの質感。
実在のフィルムそのものではありません。あくまで「思わせる色」です。けれど、どれも「こういう色が出てほしい」という自分の記憶を頼りに、粒状感やコントラストを少しずつ調整して作りました。
元の一枚は、汚さない
ひとつ、設計で気をつけたことがあります。フィルムの色は、書き出すときに重ねるだけで、元のフレームには触れません。色を当てたあとでも、いつでも素のままに戻せます。
これは「非破壊」という地味な設計ですが、私には大事でした。フィルムの色は気分で選ぶものです。今日は Portra、今日はやっぱり素のまま ── そうやって何度も迷えるように、元の一枚は、いつも汚さずに残しておく。現像室で何枚も焼き直せるのと同じです。
道具に、自分を入れる
機能は、誰が作っても似た形になりがちです。でも、どの色を選んで入れるかには、作った人の好みが必ず出ます。STIL. のフィルムルックは、その「好み」の部分です。
自分が本当に好きな色しか入れていないので、もし STIL. の色をいいと思ってもらえたら、それはたぶん、私の趣味を気に入ってもらえたということです。少し気恥ずかしいけれど、道具に自分を入れるというのは、そういうことだと思っています。
次回は、もう少し理屈っぽい話を。動画を渡したとき、iPhone が「どのフレームが良いか」をどうやって決めているのか、中をのぞいてみます。
STIL. のことは stil.photo、本体は App Store に置いてあります。