Cats and Dogs

棚のCD第 1 話 / 全 11 話

棚のCD

捨てられないレコード(CD)たち ── 私が辿り着いた収納術と、思い出の旅の始まりについて

かさばる、専用スペースを取れない、でも捨てられない。段ボールに眠っていた CD たちを、思い切って整理した話。スリムケースと 100 均ボックスにたどり着いた収納術と、これから始める「あの頃の自分」を振り返るシリーズの予告。

捨てられないレコード(CD)たち ── 私が辿り着いた収納術と、思い出の旅の始まりについて

CD というのは、なかなか厄介な存在です。

ジュエルケースは縦 142mm × 横 125mm × 厚さ 10mm。一枚一枚は小さいのに、集めれば集めるほど 棚を、本棚を、引き出しを、容赦なく圧迫していきます

専用の棚を買うほどではないけれど、捨てるなんてとんでもない。あの頃、お小遣いやアルバイト代を握りしめて買った 1 枚 1 枚に、それぞれ思い出が貼りついている。

5 〜 6 年前、私はそれらを段ボールに詰めて、押し入れの奥に置いたまま、長いあいだ開けずにいました。

上京してすぐの、CD ブーム

時計を巻き戻します。

18 歳で上京して、音楽の専門学校に通い始めた頃。同じ学校の友達と、なぜか CD を集めることが流行りました

お金なんて全然なかったはずなのに、HMV に行くと 2、3 万円分の輸入盤 CD を平気で買って帰っていた あの感覚。新譜の輸入盤コーナーで、ジャケットだけで「これは買う」と決めていく。今思えば、ジャケ買いと友達のおすすめが半々のような買い方でした。

節約しようとも思いました。だから 渋谷の TSUTAYA で、いちどに何枚もまとめて借りる。当時の TSUTAYA は新譜の品揃えがすごくて、洋楽棚を端から端まで眺めるだけで小一時間。

ただ、レンタルは借りたが最後、戦争でした。 返却期限内に iTunes に取り込まないと意味がない。家に帰ってきて、専門学校の課題よりもまず CD を MacBook に入れる。1 枚あたり 5 〜 10 分、何枚も並べて、深夜まで音楽が鳴り続ける部屋。

あの頃の自分は、本当に音楽だけで時間が満たされていました。

段ボールの中で眠っていた数年

社会人になり、結婚し、引越しを何度かして。 やがて音楽はサブスクで聴くようになり、普段の生活から少し遠ざかった CD は、段ボールに詰められて押し入れにしまわれました。

5 〜 6 年、ほぼ開けることもなく。

それでも捨てるという選択は、最後まで取れませんでした。重くて、場所を取って、開けもしないのに、どうしても手放せなかった。

そろそろどうにかしようと思い立ったのが、5 〜 6 年前の整理です。

道具との出会い ── スリムケース

CD を整理しようと決めたとき、まず必要だったのは 「ジュエルケースを外す」 という覚悟でした。

ケースのプラスチックは、CD 本体や紙ジャケの何倍もの体積を取ります。あの透明な箱を取り去るだけで、収納のスケールがまるごと変わる。

採用したのは、エレコムの ディスクケース 省スペース CD/DVD 1 枚収納 30 枚パック ブラック CCD-DPC30BK という製品でした。

スリムケースを開いた表側。バックインレイとジャケットが見える状態

紙ジャケのような感覚で 1 枚ずつ収まる、薄手の不織布スリーブ的なケースです。重要なのは、CD 本体だけでなく、ブックレット・バックインレイ(裏ジャケットのことを業界ではこう呼ぶらしいです)・帯まできちんと一緒に収まる こと。

スリムケースを開いた裏側。CD ディスクとブックレット用ポケットが見える

ブックレットは音楽の楽しみの半分です。歌詞、クレジット、アートワーク、特典の写真。あれを失わずに保管できる、という条件は譲れませんでした。

体積でいうと、ジュエルケース時代の およそ 5 分の 1 にコンパクトになった、というのが私の感覚です。

収納先 ── 100 均の CD ボックス

スリムケースに入れ替えた CD たちを、まとめて収めたのは 100 均で買った CD ボックス でした。

これはどこの 100 均で買っても、たぶん大して変わりません。サイズが合うものを選べば良し。 今は、このボックスに、あの頃の音楽がぎゅっと詰まった状態でクローゼットの中にいます。

開ける時間が、タイムスリップになる

ふだんはクローゼットにしまったまま忘れているのですが、いざ開けてしまうと、時間が溶けます

1 枚を取り出して、CD プレーヤーや、最近は MacBook にかけて、ライナーノーツを広げる。歌詞を眺めながら、クレジットの「Produced by …」「Mixed by …」を読み始めると、それだけで止まらなくなります。

「あ、このプロデューサー、別のあのバンドもやってる」 「このギタリスト、ソロ作品があったはずだ」

そうやってアーティストの繋がりを辿りながら、また別の CD を引っ張り出してくる。 音楽を聴きながら、紙の上を旅するようなあの時間は、サブスクのレコメンドでは絶対に手に入らない種類の体験です。

ここから始める「棚の CD」

不定期に、「棚の CD」 というシリーズを始めます。

私はもともと評論家ではないし、レコード会社にいたわけでもありません。だから、深い知識で語ることはできない。

代わりに、こんな目線で書いていこうと思います。

  • 「あ、この CD 持ってる!」「懐かしいな」と、同世代の誰かに思ってもらえる紹介を
  • その CD を聴いていた 当時の自分が、何を考えていたか を一緒に振り返る
  • アルバムそのものだけでなく、買ったときの店、流れていた季節、誰と一緒にいたかも

サブスクの「全部聴ける」便利さの中で、ふと、自分のものとして所有していた音楽 を見直すような時間を、誰かと共有できたら嬉しい。

棚の中で眠っていた CD たちを、1 枚ずつクローゼットから取り出していく。 「あの頃の自分」を訪ねる旅に、少しの間お付き合いいただけますように。

それでは、また次の記事で。