
Coldplay の 『A Rush of Blood to the Head』(2002 年)。 邦題は 「静寂の世界」。
棚の CD シリーズ、第 5 回はこの一枚です。
この CD には、私が 初めてライブで涙した夜 が、まるごと閉じ込められています。
始まりは、実家のケーブルテレビ
Coldplay を知ったのは、高校生の頃でした。
実家にケーブルテレビが入っていて、MTV が観られました。当時の私が夢中だったのは、ビルボードのトップチャートを毎週追いかけること。世界でいま何が鳴っているのかを、画面越しに確かめに行くような時間です。
そのチャートに上がってきたのが、「In My Place」 のミュージックビデオでした。冒頭のギターのリフレインに、画面の前で足を止められたのを覚えています。美しさと生々しさが同居した、生きた音。こういう音楽が、世界では鳴っているのか ── そう思いました。海外のミュージックビデオを本気で追いかけ始めたのは、たぶんこの辺りからです。
アルバムを手に取ったのも、その頃のこと。地元・福岡の ホークスタウンにあった HMV で買った記憶があります。
「The Scientist」は、何も知らずに観てほしい
このアルバムには、どうしても観てほしいミュージックビデオが一つあります。 「The Scientist」 です。
映像の仕掛けが、ほかにない一本です。まだ観ていない方のために、内容は書きません。ただ、一度観てみてください。
ありがたいことに、いまは公式が 4K でこの映像を配信 してくれています。かつてテレビの画面に食い入るように観たあの映像を、当時よりずっと鮮明な画質で観られる。これは、素直にうれしいことです。
初めての野外フェス、初めて泣いた夜
時間は少し飛んで、2005 年の FUJI ROCK FESTIVAL。 音楽の専門学校の友人たちと出かけた、初めての野外フェスでした。
そして、Coldplay のステージで、涙が出ました。
それまで、どれだけライブに通っても、泣いたことはありませんでした。それが、初めての野外フェスで、初めて泣く。相手は Coldplay。自分でも戸惑うくらい、自然に涙がこぼれていました。
このときの Coldplay は、グリーンステージのトリ前。その夜のトリは Foo Fighters でした。いまや世界中のスタジアムを超満員にする彼らしか知らない人には、想像しにくいかもしれません。でも、フジロックのあの規模で彼らを見られた時代の空気が、確かにありました。今となっては、戻れない類の夜です。

Coldplay で、一番好きな一枚
Coldplay のディスコグラフィーの中で、私はこの一枚が 一番好きです。
アルバムとしての見事なまとまりと、次作 『X&Y』(2005 年)への布石。あの記録的な大ヒットに向けて、ここでスタイルが固まっていった ── そう思える位置に立つ作品です。この一枚を通らずに、X&Y には行けなかったはずだと、私は思っています。
棚の CD コレクションへ
棚の CD シリーズ、第 5 回はこの一枚でした。
初めての野外フェスで、初めてライブで泣いた夜のこと。今でも時々、ふいに思い出します。あの規模で Coldplay を見られた時代は、もう戻りません。それでも、この CD を棚から取り出すたびに、あの夜の空気に、少しだけ近づける気がします。
次に取り出す CD は、まだ決めていません。クローゼットを開けて、なんとなく目に止まった一枚を、また連れてきます。
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