
ここまで、合言葉・開かない PDF・話して打つ・言葉の捜索、と STIL.HUB のまわりを書いてきました。最後に、机の上の iPhone が Mac の操作卓になるまでを、最初から最後までたどります。そして、この家族で初めての「無料」の話をして、Season 6 を閉じます。
まず、相棒を住まわせる
はじまりは Mac 側です。stil.photo/hub から相棒(Companion)を落として、アプリケーションフォルダに入れる。配布画面にもアプリにも、「ここに入れてください」だけでなく、入れないと何が起きるかまで書きました。決まった場所の外から起動すると、macOS の仕組み上、せっかく許可した操作の権限が起動のたびに失われて、「許可したのにキーだけ効かない」という、いちばん原因に辿り着きにくい壊れ方をするからです。手順書に理由を書くのは、未来の誰かの三十分を守る仕事だと思っています。
相棒が住みついたら、六桁の合言葉で iPhone と引き合わせて、準備は終わりです。
ボタンを、並べる
あとは、デッキに自分の仕事を並べていきます。アプリを起こすボタン。よく打つショートカットキー。スクリーンショット。ファイルやサイトをひらく。音量や再生の操作。ボタンに出てくる他社アプリのアイコンは、アプリに同梱したものではなく、あなたの Mac にいるアプリの姿を、実行時にもらってくる作りです。だから、並ぶのはいつも、あなたの機の中の本物です。
デッキは、アプリと連動して着替えます。デッキから Cursor を立ち上げると、手元が Cursor 専用のデッキに切り替わり、Mac で前面のアプリを替えれば、手元もそれに付いてくる。机の上の二台が、ひと組で動きはじめます。
手が、届く
キーとカーソルも、手元に来ました。画面がそのままトラックパッドになり、iPhone で話して、Mac で打てる。電卓で計算して、結果を 1 タップで Mac のセルへ。コピーしたテキストを Mac へ送り、Mac のフォルダを手元から辿ってひらく。
カーソルと、クリックと、文字入力が手元に揃ったことには、おまけ以上の意味があります。姿勢を変えられない時間や、片手しか空いていない場面でも、iPhone 一台ぶんの持ちやすさで、Mac のひと通りが操作できる。作りながら、これはアクセシビリティの道具でもあるのだと気づきました。
つながっていない時間も
Mac のそばを離れれば、STIL.HUB は家族の玄関になります。STIL ファミリーのアプリが並び、横に置けば、置き時計として机の隅に立ちます。スタンバイのウィジェットからは、ボタンを直接押せます。操作卓は、Mac が眠っているあいだも、机の上で小さく働いています。
はじめての、無料
最後に、お金の話です。STIL.HUB は無料です。アプリ内課金もありません。家族で初めてのことです。
理由は、この道具の仕事が、稼ぐことではないからです。ここは玄関です。STIL.HUB で家族に出会って、気に入った道具があれば連れて帰ってもらう ── それがこのアプリの役割で、成果はダウンロード数ではなく、玄関から先に進んでもらえたかで測ることにしました。幸い、サーバーを持たない作りなので、無料で配り続けても、維持費がかかりません。設計が、そのまま商いの形になりました。
六つ目の道具
動画の一瞬、顔のイラスト、名刺、レシート、声、そして操作卓。六つ目にして初めて、あなたの素材を処理しない道具になりました。かわりにこの道具は、これまでの五つと、これからの家族を、机の上でつなぎます。
家訓の「すべて、この iPhone の中で。」は、今回は少しだけ形を変えて、「すべて、この部屋の中で。」でした。素材を預からなくても、曲げない一点は同じです。
おわりに ── 現像ノート Season 6
現像ノートは、ここで Season 6 を閉じます。ひとつの季節に、二つのシーズンを書いたのは初めてでした。次に何を取り出すかは、まだ決めていません。家族は、これからも少しずつ増えていきます。
STIL.HUB は App Store で公開しています。無料です。アプリと Mac 用の相棒は stil.photo/hub、本体は App Store に置いてあります。よければ、机の上の iPhone に、二つ目の仕事を渡してみてください。