
STIL. は、企画も、設計も、デザインも、コードも、ストアのコピーも、ぜんぶ私ひとりで作っています。今日は、その「ひとり」の話です。
なぜ、ひとりでやるのか
人に任せたほうが速いこともあります。それでも自分でやっているのは、STIL. が **「自分が欲しかったものを作る」**という動機から始まっているからです。
このブログの最初の記事で、20 年勤めている会社のかたわら、ずっと何かを作ってきた話を書きました。本業では、大きなものを、チームで、堅実に作ります。それはそれでやりがいがあります。でも、一字のコピーや、背景の色みや、フィルムの選び方まで、自分の好みを最後まで通せる場所が、別にひとつ欲しかった。STIL. は、その場所です。
私の好みは、たぶん万人受けする方向ではありません。玄人寄りで、細部にうるさい。そういう「角」を、誰かに任せると丸くなってしまう。だから、丸めたくないところは、自分でやる。ひとりでやるのは、効率の話ではなく、譲りたくないものがあるからです。
ひとりでは、回らない
とはいえ、正直に言えば、ひとりで回る量ではありません。
私は本業があり、家業のことも考えていて、資格の勉強もしています。そのうえで STIL. を、企画からコードから店頭のコピーまで作る。素直に考えれば、時間が足りません。
足りない時間をどうにかするために、私は AI を相棒として組み込むことに、かなり本気で取り組んできました。調べもの、たたき台、文章の下書き、記録の整理 ── ひとりの人間がやると半日かかることを、AI に任せて、自分は「判断」と「好みを通すこと」に集中する。AI に任せるのは時短のためというより、ひとりでは到底やれない仕事を、それでも回すためです。
ここは私の、いまいちばんの興味でもあります。「ひとりで、でもひとり分以上の仕事をする」ための仕組みづくり。STIL. は、その実験台でもあります。
任せても、最後は自分が決める
ひとつだけ、線を引いていることがあります。最後の判断は、必ず自分でする。
AI にたたき台を作ってもらっても、「これでいいか」を決めるのは自分です。色も、言葉も、機能の取捨も。任せられるのは作業であって、好みではない。むしろ、作業を任せられるようになったぶん、「自分は何が好きなのか」をはっきりさせる責任が増えました。道具が速くなるほど、最後に問われるのは「で、お前はどうしたいの」です。
ひとりだからできること
大きな組織には、大きな組織にしか作れないものがあります。同じように、ひとりには、ひとりにしか作れないものがあると思っています。迷いも、偏りも、好みも、全部ひとりの中で完結しているから出せる、まとまりのようなもの。
STIL. を触って、もし「一本の筋が通っているな」と感じてもらえたら、それはたぶん、ひとりで作っているからです。それを、これからも手放さずにいたい。
次回は、この連載の Season 1 の締めくくりとして、「一本のアプリが、家族になっていく」話を書きます。
STIL. のことは stil.photo、本体は App Store に置いてあります。